【企業・法人】防災グッズの完全ガイド|最低限必要な備蓄リストや義務について解説

現代社会において、企業が直面するリスクは多様化・複雑化しています。
特に、地震や台風、豪雨といった自然災害は、いついかなる時も事業活動を根底から揺るがす深刻な脅威です。

このような予測不能な事態において、従業員の生命と安全を守り、事業の継続性を確保することは、企業に課せられた重要な社会的責務と言えるでしょう。

この記事では、法的な責任から具体的な備蓄リスト、さらには賢い管理・運用術、防災グッズのサブスクやレンタルサービスまで、企業防災の全てを網羅的に解説します。

「会社の防災グッズ備蓄は、法的な義務なのか?」多くの企業担当者が抱くこの疑問に対し、結論から言えば、直接的な罰則を伴う全国的な法律はないものの、事実上の義務と捉えるべきです。

その根拠は、労働契約法第5条に定められた「安全配慮義務」にあります。
企業は従業員に対し、生命や身体の安全を確保する義務を負っており、これは自然災害発生時も例外ではありません

さらに、東京都の「帰宅困難者対策条例」をはじめ、多くの自治体では、企業に従業員の3日分の食料や水などの備蓄「努力義務」として課しています。

リモートワークが普及した現代では、この安全配慮義務はオフィスの物理的な空間を超え、在宅勤務の従業員にも及ぶことを認識しなければなりません。

本当に備えるべき防災グッズリスト

災害発生後、交通インフラは麻痺し、支援がすぐに届かない事態が想定されます。
人命救助のタイムリミットとされる「72時間の壁」を乗り越え、従業員が安全に事業所内で待機するためには、計画的な備蓄が不可欠です。
ここでは、企業が本当に備えるべき防災グッズを解説します。

最低限確保したい防災グッズリストと推奨量

企業が備蓄すべき防災グッズの量は、最低でも従業員数×3日分が基本です。
しかし、事業所の立地や想定される災害の規模によっては、1週間分を備えても良いでしょう

以下のリストは標準的な指針であり、自社の状況に合わせてカスタマイズすることが重要です。

カテゴリ品目推奨量(1人あたり3日分)備考
水・食料飲料水9リットル(1日3L)長期保存可能なものが望ましい
非常食9食(1日3食)アルファ化米、缶詰、乾パンなど調理不要なもの
衛生用品簡易トイレ15回分(1日5回)凝固剤・消臭袋がセットになったものが衛生的
衛生用品適量マスク、除菌シート、ウェットティッシュ、生理用品など
防寒・休息毛布・保温シート各1枚体温低下を防ぐ。省スペースなアルミシートが便利
情報・電源携帯ラジオ複数台乾電池式や手回し充電式が停電時に役立つ
懐中電灯・ランタン複数個両手が使えるヘッドライト型も推奨
乾電池・バッテリー十分な量モバイルバッテリーやポータブル電源も有効
救急・救助救急セット1セット以上消毒液、絆創膏、包帯、常備薬など
ヘルメット・軍手従業員数分落下物やガラス片から身を守る

オフィス環境・業種別に追加したい特化型防災グッズ

基本的な備蓄リストに加え、自社のオフィス環境や業種特有のリスクに応じた備蓄も不可欠です。
画一的な備えでは、いざという時に機能しない可能性があります。

例えば、高層階にオフィスを構える企業では、エレベーター停止に備え、負傷者を搬送するための担架や、階段を安全に降りるための避難用具の検討が必要です。
化学薬品を取り扱う工場や研究所では、特殊な薬品に対応した保護具や中和剤が必須となるでしょう。

また、サーバーや重要データを扱うIT企業では、停電からシステムを守るための大容量UPS(無停電電源装置)ポータブル電源が事業継続の生命線となります。
高齢者や要介護者が利用する介護施設では、非常食も咀嚼しやすいレトルトのお粥や、介護用品(おむつ、清拭シート)を潤沢に備える必要があります。

自社の事業内容と周辺環境を分析し、リスクを具体的に想定することが重要です。

会社備蓄と個人用備蓄の線引きと従業員への推奨品

企業の防災備蓄は、従業員全員の生命維持を目的とする「共助」の備えです。
水、食料、簡易トイレ、毛布といった基本的な物資は、企業が責任を持って確保すべき範囲です。

一方で、従業員一人ひとりが自身のニーズに合わせて備える「自助」も極めて重要です。
企業は、従業員に対して個人用備蓄の準備を積極的に推奨しましょう。
具体的には、常備薬、アレルギー対応食、眼鏡のスペア、モバイルバッテリー、現金などが挙げられます。

企業としては、防災ハンドブックを配布して必要な個人備蓄品リストを周知したり、福利厚生の一環として防災グッズの購入費用を補助したりする制度を設けることも有効です。
会社備蓄(共助)と個人備蓄(自助)の両輪が揃って初めて、実効性のある防災体制が構築されます。

防災グッズの賢い管理・運用術と保管の最適化

防災グッズは、ただ購入して倉庫に眠らせておくだけでは意味がありません。
賞味期限切れの非常食や、電池切れの懐中電灯は、緊急時に何の役にも立たない「無用の長物」です。
備蓄品を常に「使える」状態に保つための、戦略的な管理・運用術が求められます。

ローリングストック法を社内で実践する具体的なステップ

備蓄品の鮮度を保ち、無駄な廃棄をなくすための賢い管理手法が「ローリングストック法」です。
これは、備蓄している食品などを定期的に消費し、消費した分を買い足していくことで、常に新しいものが備蓄されている状態を維持する方法です。

社内で実践するには、以下のステップが有効です。

  1. 計画的な消費ルールの設定:「毎月最終金曜日に、備蓄しているレトルト食品を社員食堂のメニューに加える」「防災訓練時に非常食の試食会を行う」など、消費するタイミングを決めます。
  2. 管理台帳の作成:品目、数量、賞味期限、保管場所を一覧化し、誰が見ても分かるようにします。
  3. 担当者の明確化:各部署で管理担当者を決め、定期的なチェックと補充の責任を明確にします。
    この方法により、廃棄ロスの削減と管理コストの最適化に加え、従業員が非常食に慣れ親しむことで、災害時の心理的負担を軽減する効果も期待できます。

非常食の賞味期限・使用期限を確実に管理するシステムとツール

従業員数が多く、複数の拠点を持つ企業にとって、Excelや紙の台帳での備蓄品管理は限界があります。
入力ミスや確認漏れ、担当者交代時の引き継ぎミスなど、ヒューマンエラーのリスクが常に付きまといます。

そこで活用したいのが、クラウド型の防災備蓄管理システムです。
これらのシステムは、賞味期限が近づくと自動でアラート通知を送る機能や、複数拠点の在庫を一元管理する機能などを備えています。

スマートフォンからも簡単に在庫状況を確認できるため、管理業務の負担を劇的に軽減し、管理の抜け漏れを確実に防ぐことができます。

防災グッズの保管場所の確保と効果的な分散備蓄戦略

防災グッズの保管場所は、戦略的に決定する必要があります。
最も避けるべきは、一箇所への集中保管です。
災害によってその保管場所が被災すれば、全ての備蓄を失うリスクがあるからです。

理想的なのは、各フロアや部署ごとなど、複数の場所に分散して備蓄することです。
これにより、どこで災害が発生しても、従業員が最寄りの備蓄品にアクセスできます。
保管場所を選定する際は、以下の点に注意してください。

  • 安全性:地震で倒壊する危険のある棚や、浸水リスクのある地下室は避ける。
  • アクセシビリティ:従業員が誰でも場所を把握しており、緊急時に迅速に取り出せるようにする。
  • 環境:直射日光や高温多湿を避け、備蓄品の品質を維持する。
    防災グッズの場所を周知徹底し、定期的な訓練で取り出し方を確認する。

【法人向け】おすすめの防災グッズサービス6選

防災グッズを自社で一つひとつ選定し、在庫や賞味期限を管理するのは、担当者にとって大きな負担となります。
そこで注目されているのが、法人向けの防災グッズのサブスクやレンタルサービスです。

これらのサービスは、初期費用を抑えつつ、備蓄品の選定から購入、配送、期限管理、定期的な入れ替えまでをワンストップで提供してくれます。
ここでは、おすすめのサービスを厳選してご紹介します。

あんしんストック

出典:あんしんストック
サービス名あんしんストック
特徴備蓄サービスの専門会社によるワンストップサービス。複数拠点の備蓄情報も一元管理可能。
料金目安要問い合わせ
運営会社株式会社Laspy

備蓄サービスの専門会社による、防災備蓄品のトータルサポートサービスです。
備蓄品の用意から搬入、棚卸し、そして期限が近づいた際の入れ替えまでを一括で代行します。

独自のシステムで複数拠点の備蓄情報も一元管理可能できるため、事業所ごとの備蓄状況保管場所も一目でわかります。
さらに、社内に備蓄保管場所を確保できない場合には、スペースのアレンジも対応してもらえます。

拠点が多く備蓄の管理に工数がかかっている企業や、置き場所に困っている企業に最適です。

PASONA 日本総務部

出典:PASONA 日本総務部
サービス名PASONA 日本総務部
特徴総務のプロによる管理代行サービス。柔軟なカスタマイズが可能で、既存備蓄品の管理も対応。
料金目安在庫管理ツール:初期費用20,000円・年間費用80,000円~
その他サービスは要問い合わせ
運営会社株式会社パソナ日本総務部

総務業務のアウトソーシングで豊富な実績を持つパソナ日本総務部が提供する防災備蓄品管理代行サービスです。

総務のプロの視点から、企業の状況に合わせた最適な備蓄品を提案し、在庫管理から期限管理、発注・補充までをトータルでサポートします。
柔軟なカスタマイズ性が特徴で、既存の備蓄品の管理から依頼することも可能です。

煩雑な管理業務を専門家に任せ、防災担当者の負担を軽減したい企業や、自社の状況に合わせたきめ細やかなサポートを求める企業に最適なソリューションです。

ALSOK(アルソック)

出典:ALSOK
サービス名ALSOK
特徴警備会社の信頼と実績。専門家によるコンサルティング。備蓄品管理サービスも提供。
料金目安要問い合わせ
運営会社ALSOK株式会社

警備業界のリーディングカンパニーであるALSOKが、セキュリティのノウハウを活かして提供する防災サービスです。

防災の専門家が企業の状況をヒアリングし、最適な備蓄品をパッケージで提案します。
また、備蓄品の期限管理棚卸しフードバンクなどへの寄贈まで代行してもらえるため、担当者がコア業務に集中できる環境を作れます。

企業の安全を守り続けてきた実績と信頼性は、何よりの安心材料と言えるでしょう。

SECOM(セコム)

出典:セコム
サービス名セコム
特徴防災コンサルティングの一環として備蓄品を提案。安否確認など他のBCPソリューションも提供。
料金目安要問い合わせ
運営会社セコム株式会社

ALSOKと並ぶ警備業界の雄、セコムもまた、企業の防災対策を支援するサービスを提供しています。

セコムが課題を抽出し、最適な防災備蓄品を提案します。
さらに、安否確認システムや施設の強化など、セコムが持つ多様な防災・BCPソリューションと組み合わせることで、より包括的で実効性の高い災害対策を構築できるのが強みです。

ハード(備蓄品)ソフト(システム・計画)の両面から防災体制を強化したい企業に適しています。

エコサブスク

出典:エコサブスク
サービス名エコサブスク
特徴防災グッズやポータブル電源のサブスク。途中で社員が増えた場合は柔軟にサービス内容を変更可能。
料金目安要問い合わせ
運営会社株式会社カイレン・テクノ・ブリッジ

初期費用が無料で、導入しやすい防災備蓄サブスクリプションサービスです。

防災グッズの用意だけでなく、期限までワンストップで管理してもらえます。
途中で社員が増えた場合は、それに合わせてサービス内容を変更できる点も魅力です。

まずは手軽に防災備蓄のサブスクを試したい企業にぴったりなサービスです。

Stock+One(ストックワン)

出典:Stock+One
サービス名Stock+One
特徴導入費用0円で備品の入替に関わる費用も不要。「倉庫備蓄プラン」に加えて「帰宅支援セット」も提供。
料金目安【倉庫備蓄プラン】
スタンダード(1人分):780円(税込)/月
プレミアム(1人分):980円(税込)/月
【帰宅支援セット】
1人分:550円(税込)/月
運営会社株式会社ストックワン

ストックワンは、初期投資が不要なサブスクリプションモデルを採用し、料金体系も分かりやすいサービスです。
備蓄品の配送から入替えまでを全て代行しており、期限到来時の入替に関わる費用も不要なため、常にかかる費用は同額です。

さらに、入替後の食品はフードバンクに寄贈できるため、社会貢献とともにフードロスをなくせます
もちろん、従業員等への配布も可能なため、災害食の試食を通して社員の防災意識を高めることもできます。

「倉庫備蓄プラン」に加えて「帰宅支援セット」も提供しており、あらゆる困った場面に対応できるサービスです。

BCP策定・防災訓練・従業員教育で「備え」を「強み」に変える

防災グッズという「モノ」の備えは、あくまで企業防災の第一歩です。
その備えを真に機能させるためには、という「計画(BCP:事業継続計画)」「実践(防災訓練)」「意識(従業員教育)」が不可欠です。

これらを連携させることで、企業の防災力は単なる「備え」から、競争力を生み出す「強み」へと昇華します。

BCP策定の基礎と実践ポイント

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、災害などの緊急事態において、中核となる事業を中断させない、または可能な限り短時間で復旧させるための方法や体制を定めた計画です。
防災グッズの備蓄は、このBCPを支える重要な基盤となります。

BCP策定のポイントは、まず自社の事業の中で「絶対に止めてはならない中核事業」を特定することです。
その上で、その事業を継続するために必要な経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を洗い出し、災害時にそれらがどうなるかを想定します。

備蓄品は、従業員(ヒト)が安全に活動を継続し、事業復旧にあたるための生命線であり、BCPの実効性を担保する上で欠かせない要素です。

実効性のある防災訓練と従業員の防災意識を高める教育アイデア

策定したBCPやマニュアルが「絵に描いた餅」にならないよう、定期的な防災訓練が不可欠です。
単なる避難訓練だけでなく、災害発生を想定した具体的なシナリオに基づくシミュレーションや、実際に安否確認システムを使う訓練などを取り入れましょう。

従業員の防災意識を高めるためには、以下のような教育アイデアが有効です。

  • 防災グッズ試食会:ローリングストックを兼ねて、様々な非常食を試食する機会を設ける。
  • 防災クイズ大会:社内イベントとして、楽しみながら防災知識を学べる企画を実施する。
  • 外部専門家によるセミナー:消防署員や防災士を講師に招き、実践的な講演会を開催する。

災害時の安否確認・情報伝達体制の構築とシステム活用

災害発生直後の混乱の中で、最も優先すべきは従業員の安否確認です。
電話やメールは繋がりにくくなることが予想されます。

そこで有効なのが、安否確認システムの導入です。
システムを導入すれば、災害発生時に全従業員へ安否状況の報告を求めるメッセージを一斉送信し、回答を自動で集計できます。

これにより、迅速かつ正確に状況を把握し、次の対策へと移行できます。
また、情報伝達手段もシステムだけに頼らず、社内SNSや掲示板など、複数のルートを確保しておくことがリスク分散に繋がります。

地域連携とESG/SDGsの視点で企業防災を深化させよう

現代の企業防災は、自社の従業員と資産を守るという内向きの活動に留まりません
地域社会の一員として連携し、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGsといった世界的な潮流の中でその役割を果たすことで、企業価値そのものを高める戦略的な取り組みへと進化しています。

共助の精神で地域社会と連携する企業防災

大規模災害時において、行政の支援(公助)には限界があります。
そこで重要になるのが、地域や身近な人々が助け合う「共助」の精神です。
企業は、その経営資源を活かして共助の重要な担い手となることができます。

具体的には、自治体と防災協定を締結し、災害時に事業所の施設を一時避難場所として提供したり、備蓄している水や食料を地域住民に提供したりする取り組みが挙げられます。

平時から地域の防災訓練に積極的に参加し、「顔の見える関係」を築いておくことが、有事の際の円滑な連携に繋がります。

こうした活動は、地域社会のレジリエンス(防災力)向上に貢献するだけでなく、地域から信頼される企業としてのブランドを確立します。

企業防災がESG経営とSDGs達成に貢献する側面

近年、投資家が企業を評価する上で重視するのがESG(環境・社会・ガバナンス)の観点です。
企業の防災への取り組みは、特に「S(Social:社会)」の評価に直結します。

従業員の安全と健康を守る体制を整備することは、最も基本的な社会的責任です。
また、サプライチェーンの持続性を確保し、災害時にも事業を継続できる体制を構築することは「G(Governance:企業統治)」におけるリスク管理能力の高さを示します。

さらに、地域社会と連携した防災活動は、SDGs(持続可能な開発目標)の目標11「住み続けられるまちづくりを」にも貢献します。

防災対策は、もはや単なるコストではなく、企業の持続的な成長と社会からの信頼を獲得するための戦略的なESG投資なのです。

まとめ|職場の防災グッズは従業員と事業を守る未来への投資

本記事では、企業における防災グッズの備えについて、法的責任から具体的なリスト管理運用そしてBCPやESG経営との関連性までを網羅的に解説しました。

防災グッズの備蓄は、労働契約法が定める安全配慮義務を果たすための事実上の「義務」です。
最低でも従業員数×3日分の水、食料、簡易トイレなどを基本に、自社の事業環境に応じた備えが求められます。

そして、その備えを形骸化させないためには、ローリングストック法の実践管理システムの活用分散備蓄といった賢い管理運用が不可欠です。

防災への取り組みは、単なるリスク対策に留まりません。
それは、従業員の命と生活を守り、事業の継続性を確保し、地域社会に貢献することで、企業の社会的責任を果たし、持続的な成長を実現するための「未来への投資」です。

この記事が、貴社の防災体制を一層強固なものにする一助となれば幸いです。